ソウを雇ってアイツを監視<番外編>


 あいつの動向が知りたい。
 ただのラビチャじゃ駄目だ。心配されないように嘘ばかりつかれちまうし、この間の作戦がバレちまった。だったら今回は……。

「ソウ、ちょっといいか?」
「はい……? どうかしたんですか、大和さん?」
「実はさ、アマゾンゾンでさ、見ていただけだったのが……ほら」
「うわ……! こ、これは……せ、せせっ、世界各地の、タ、タバスコ!!」

 ーー作戦・その二。ソウを雇ってあいつを監視する。タマほどではないが、ソウを動かせると思う。

「ソウ、辛いの好きだろ? どんなのがあるのか疑問に思ってネットで見てたんだ。そしたら、自分の頼んだものと一緒にコイツラも届いちまってさ」

 もちろん、大ウソだ。初めからソウにやるつもりで注文した。アマゾンゾンって便利だよな。

「返品するのも面倒くさいからさ、ソウにやる」
「えっ……で、でも……結構値が張ったんじゃ……」
「いいって。いつも未成年組の面倒を見てるから、リーダーとしてあんたにプレゼントするよ」
「……お気持ちは嬉しいですけど……」
「ーーだったらこうしよう。タマが前にあんたのところのマネージャーを撮っていたっていうのは、知ってるだろ?」
「……つまりは、こういうことですか……。僕を動かしてさんを監視したいと?」
「さすがソウ。話が早い〜」
「わかりました……。彼女の動向、報告しますね。ただし、盗撮はしませんがそれでも……?」
「ああ。構わない」


 ということで、新たにソウを雇った俺の財布はすっかり軽くなった代わりに、再びを間接的に監視することに成功した。今回は写真は付かないが、ソウも律儀だ。逐一、メッセージが来た。

『午前11時。さん、僕たちとお弁当を食べる。からあげを1つ環くんに取られて怒っている』
『午前11時28分。お弁当を食べ終わる。さん、お手洗いに行く』
『午前11時56分。車を運転。スタジオに向かう。車内でモンジェネを流して口ずさんでいる』
『午後0時半。バック駐車に若干苦戦しつつも、無事に到着』
『午後4時過ぎ。さんと合流。寮まで送迎』
『午後8時。さん、昨日の残り物らしいおかずを食べる』
『午後8時45分。片付けを終え、お風呂に入る』
『午後9時20分。ソファーに座り、テーブルに飲み物とデザートを広げる。今日のご褒美らしい』
『午後10時。スマホをチェックする。好きなゲームをするらしい』
『午後11時半。寝る準備を始める』
『午前0時。就寝』
『午前6時。起床。顔を洗ったり、着替えたり、洗濯機を回したり、朝は忙しいらしい』
『午前6時半過ぎ。朝食。朝はパン派らしい』
『午前7時半。出勤』

 ーーちょっと待て。
 まるでソウがちゃんをストーカーしてるみたいじゃねえかよ! 何でこんなに細かいんだ。問題は夜だ。一緒にいるはずもないのに。まさか、本当にスクリュードライバー片手にドアぶち破ってカメラでも設置したのか?!
 ソウに依頼はしたがさすがに心配になって事務所に向かえば、ちゃんは何事もなかったかのようにケラケラと笑っていた。

「……正直に言ってくれたら私が直接連絡するのに……って、や、大和さん?!」

 彼女の隣にはくすくすと笑うソウもいて。
 ーーしてやられた。悟った俺は無性に恥ずかしくなって、照れ隠しのつもりで彼女の開きかかった口に飴玉を押し込んだ。

「イチゴミルクキャンディー、やる」
「あ、ありがとうございま……す」
「あんたのために買ったんだ。明日もやるよ」
「クスッ……大和さん、甘いものはあまり得意ではなーーッ?!」
「ソウ、おまえさんも黙って食え」
《終》

>>2018/06/15
そーちゃんバージョンです。番外編はおもしろたのしく!