と出会ったのは、俺がまだRe:valeの万として活動していた頃。
俺達にファンレターをくれた短髪のサッカー少年の隣でそわそわしていたのが彼女だった。確か、初めの頃、彼の隣には彼のお姉さんがいたはず。彼女でも出来たのかな? 一緒に見に来てくれて嬉しいなあ。
その程度でしか認識がなかった。
それもそうだ。俺達はステージにいる。
彼女達はお客さんだ。
その一線を越えることは出来ない。
だが、ある事件が起き、サッカー少年――春原百瀬くんが助けに入ったことがきっかけで、彼と彼女と関わっていくようになった。
俺があんな事故に巻き込まれた時にだって――……。
百くんには感謝してる。千を支えてくれて。Re:valeを続けてくれて、本当に……。でも、だからこそ、連絡を絶った。
百くんには申し訳なかったけれど、
とはお互いに内密にというのを条件に連絡を取り続けていた。百くんと千の近況がただただ知りたかったし、彼女を好意的に思っていたから。恋愛感情とはまたちょっと違うけれど。
「
、久しぶり。元気にしてた?」
「元気じゃないのは万さんの方でしょう?! 大丈夫だったんですか? 心配してたんですよ」
あの事故後、行方をくらまして無事に治療を終えてから
と会うことにしたのだから、それなりに月日が経ってしまっていた。
「うん。なんとか、ね……。そういえば百くんは何してる? この数カ月、百くんの話になると躱されるから何かあったのかと思って」
すると、みるみる顔色が悪くなっていく。
ああ、やっぱり。
違うと思っていたかったけど俺の悪い予感が当たってしまったわけか。別れちゃったの? そう問うと、苦しそうにうん、とうつむいて一言。しばしの沈黙の後、顔を上げてぎこちなく笑いながら続ける。
「今でも大好きなんだよ。大好きなのに……別れちゃった。弟に協力してもらって、好きな人いるって嘘ついて。あの時の百の顔が忘れられない。百、少し泣いてた。でも、百に迷惑かけたくなかった。私との関係が知られたら百にダメージが……。百に迷惑がかかる! 千さんにも迷惑がかかる! いや……そんなの嫌だったの……! だって、ほら、あっちの百、すごくいい顔してるから……」
ビルの大型ディスプレイRe:valeの新曲PVが流れている。颯爽と駆け抜けていく百くんが、画面から飛び出してそのまま彼女のところに来てくれたらいいのに――。
後日、
から連絡があり、家に招待された。一人暮らししているようで、男が女性の家に入ってもいいものかと思っていたけれど、玄関に踏み入れればその感情はどこかに吹っ飛んでいった。
何故なら、至る所に千と百くんのポスターやブロマイド、ライブグッズが……! うわっ、すごい! 俺も持っていない非売品の旗まである。部屋にはタペストリーまで! 写真撮らないと!
《5話へ続く》