※第3部の若干のネタバレ、捏造有り。
僕とモモでどうにかこうにか新生Re:valeとしての形がなっていき、着実と歩みを進めていっていた時。僕はとある人の言葉をふと思い出して、一歩分後ろにいるモモに振り返りざま言う。
「ねえ、決められた道ってつまらないと思わない?」
全くもってつまらない。自分の道は自分で決める。他の誰でもない自分が。赤の他人に左右されてたまるか。
他人に支配されるのは気に食わない。
用意されたレールの上を歩くだなんて以ての外。
学生時代の僕はとにかく人の言うことに耳を貸したくなかった。今でも大きくは変わらないが、少なくとも、モモの意見は聞くようにはしたいと思っている。
そんな彼はうーん、としばらく考えたあと、そうだねと一言相槌を打って手を上着のポケットに入れた。
明日は久しぶりの野外ライブの日だった。
夕日が山に隠れて一番星が出る時間になる。
以前まではライブハウスでの活動が多かったが、やはりメジャーデビューすると話が変わってくる。メディアに露出するようになり、“外”での活動よりも“中”での活動のほうが増えた気がする。
例えば、スタジオ。
完璧な設備が整っている。カメラも音響も照明も。不揃いな外よりも、完璧な中での活動はより完璧を求められ、心身ともに削られていた。モモの方が僕よりも傷をえぐられているように痛みが大きそうだけど。僕はそこまで人のことは考えていないから。
だから、久しぶりの開放感のある、そして自由な外ーー野外ライブが新鮮で。柄にもなく緊張していた。
野外ライブは過去を思い出させる。
万とやっていた時のこと、ライブハウスのこと、モモとの出会い、そしてーー唯一、クラスメイトに「素敵な曲だね」と曲に対して褒めてくれたことを。
あの人は今、どこで何をしているのだろうか。就職のことを心配していたあの人に、「僕は今、トップアイドルを目指して相方と頑張っているんだ」と言ってやりたい。ああ、そうね。柄にもないことを言った。
「今日は野外だね、モモ。嬉しい?」
「うん! 久しぶりだもん! わくわくする!」
「そうね。わくわくするね」
衣装に着替え終わった僕の胸ポケットには平たいクリアケースに入れた手紙を忍ばせている。モモも知らない。僕だけの秘密のお守り。
ライブが何事も起こらず成功しますように、とーー。
また、あの人に会えますように、とーー。
どうか、今宵も叶えてくれますように。否、叶えさせるさ。僕とモモで。
「そろそろ行こう。時間だ」
「行っちゃいますか〜!」
ブーツを鳴らす音がメロディーのようで。これから歌う曲がもう流れているように聞こえた。
「どうも〜〜! Re:valeで〜す! 今日は来てくれてありがとう!」
相変わらずのテンションで前に出る。本当、僕は彼に支えられている。でも、このセリフは少しおかしいんじゃないか?
「ここはテレビか! 野外ライブだよ、モモ」
「え〜? 大して変わんないじゃん!」
「変わるって」
ペシっと頭を叩けば、笑い声が四方で飛び交う。いつものトークは成功だ。まだ観客席のライトが消されていないせいか、前の方なら観客の表情が伺える。笑ってくれてよかった。テレビの観覧席とはまた違うから、フリートークの感覚が掴みにくかったが今なら行けそうだ。ファンサービスがなっていないとモモに怒られたばっかりだからね。ホッとしてる。
次の話題へと差し掛かろうとした時、ある一点にだけ視線がいった。
「ーー……だってね〜? ん……? ユキ?」
「あ、……うん、そう……ね?」
いけない。モモに振られたのに答えられなかった。それなのに、僕の視線を変えることは出来なくて。
「
、……」
名前を口にしてしまいそうになるのをぐっと堪え、彼女だと確認するのに精一杯だった。
《2話へ続く》