今日も私は岡崎事務所で昼食を作っていた。超人気アイドル・Re:valeがこんな昼間から二人が揃っているだなんて珍しいよね、だなんて言ったら百は八重歯を見せて「
のご飯食べないと頑張れないんだ」って。こんなことさらりと言っちゃうんだもんな、百瀬くん。裏も表もなく。だから、私は、日に日に好きになっていくんだろうなって。
「百瀬く……じゃなかった、百〜、お待たせ〜! 百〜〜?」
おかしいな。さっきまで後ろから話しかけられていたのに、振り向いても誰もいやしない。大皿に盛り付けたからあげとミネストローネが冷めちゃうよ。
一先ずいつものテーブルにでも並べておこうとランチョンマットを敷き、料理を並べた。その他、必要なものも全て出し終えたが、それでもまだ彼らの姿はなく。一体何処へ行ったのやらとため息を零した時だった。口元を誰かの手で覆われたかと思えば、すぐさま体は宙に浮いた。強引にする人なんて顔を見なくても分かってる。
「千斗……いきなり口元押さえつけられたらびっくりするから止めてって前にも言ったーーんぐっ?!」
刹那、千の美形な顔が私の視界いっぱいに映り、唇を奪われた。
「ゆ、千斗っ、ん、あっ、ァ……んぁ、んんッ……」
割り込んでくる舌先をぼんやりとする頭で受け入れれば、それはするりと入ってきて。歯列を丁寧になぞり、吐息を零しながらも私の舌を絡め取った。ちょうどその時、口の中に甘酸っぱいベリー系の味が広がっていった。直前まで千斗が食べていたのであろうか?
「はぁッ……ねえ、どう、
」
「んッ、ど、どうって言われても……」
恋人関係でもないのにこんなことをして後ろめたい気持ちがあるけど、私は前からずっと千斗が好きだから嬉しいだなんて言えるはずもなくて(百瀬くんも同じくらい好きだなんてもっと言えない)。
いつの間にか場所をソファへと変えられて、しかも、千斗の太ももの上にまたがるように向かい合って座っているというめちゃくちゃ恥ずかしくて、恋人同士なら嬉しいシチュエーションになっていて。
「……変な気持ちになってない? そうね……例えば、ココ……」
「っ、ひやぁぁァッ!?」
「ふふっ……相変わらず、敏感だね、
は。乳首が盛り上がって訴えてるよ。もっと触ってほしいって」
「……ッ、ゆ、千ぃ……」
「うん、何?」
「し、下も……下も、ほ、欲しいの……っ!」
「うん、可愛いね、
……ココ、も欲しいの?」
「あッ……! ああぁあァァッ!」
「素直な反応。いい子だ……」
変だな私の体。こんな厭らしい声出して。こんな卑猥な単語を言って。変なんだけど、考えることすら億劫でーー……。だから気が付かなかったんだ。
「ゆ、ユキ……抜け駆けは反則・ペナルティって言ったよね……?」
床に転がっているタオルケットを乱暴に取った百は私に頭からかぶせると、そのまま目隠しするように担がれる。
「
。いいって言うまで取っちゃダメだから」
そう言う彼は明らかに怒っていて。私はもう何も言えなかったんだ。
もういいよ、と優しい声色がタオルケットを取ってくれる。ゴボゴボゴボと水の出る音、反響する空間、石鹸の匂い。ここがどこかは入った瞬間、分かっていた。
「……お風呂、入ろっか……」
大人一人では大きいバスタブに、広々とした浴室内。マットやベンチも置いてあり、のんびりと入りながらストレッチも出来るようなちょっとした銭湯みたいだった。
百は自分のカラーである濃いピンク色のボトルのソープを手に取り、黙々と体を洗っていた。
はラズベリーの絵が入ってるコレを使ってと手渡されたボトルで、私も洗うことにした。もちろん、彼は後ろを向いてくれていて、私を視線に入れることはなかった。首から足先まで洗い終われば、不思議な気分に包まれていくのを感じ、どこかで味わったなと少しばかりのぼせた頭でまた考えれば、百はにっこりと笑って私を横抱きにする。
「
、綺麗だよ……すごく」
ちゅっ。ちゅっ。
頬、それから首筋へとキスを落とせば、その首筋にもう一度ちゅっと音を立てて、吸い付いた。チクリとする痛みが不思議と気持ちがいい。
「っ、ッ……ぁぁァん!」
「オレがしたっていう証……つけちゃった♪」
「……んぅ?」
「ユキ、ずるいよ……。抜け駆けは禁止なんだ。オレ達のルールでね、抜け駆けされたら、彼女と一緒にお風呂に入って洗ってあげて……それから……ーー好きなこと出来るってね」
「……好きなことって?」
「うーん? そんなの決まってる。
とお風呂でエッチなことしちゃう」
その瞬間、百は私を浴槽に沈めた。馬乗りにされては頭を押さえつけられて、まともに呼吸が出来ない。くるしい。
「あと三秒……、よし、
っ! 手荒な真似してごめん!!」
ゴホゴホとむせ返る私に百は背中を叩く。何がしたかったんだろうか、彼は。私を殺したかったというのか。だが、水中からでも彼の声が聞こえたのだ。「あと三秒」って。この行為に意味があるということかーー……三秒だけでも沈めさせるということに。そういえば、このお風呂も紫色で、ベリーの甘い香りがする……。
ここまで考えて止めた。もうどうでもよくなった。体中が火照って変にあつくて、彼の声を聞く度に疼いて仕方がない。
「も、百……っ、百瀬く、ん……ァッ、ハッ……ハァッ、体がぁぁ、んぁッ!」
「うん、分かるよ
。オレに興奮しちゃってるんでしょ?」
「やばい、のぉ……ひっ、ゃぁァアァァッ!」
「……いいよ、もっと興奮しちゃっても。ねぇ、
、言ってみてよ? どこをどうしてほしい?」
そんなの決まってる。でも言えるわけないじゃない! そう首をふるふると振っても、私の意志に反して口は開いてしまって。
「私の……私の……っ!」
「だーめ。ちゃんと言って?」
「私のココ……ぐぢょぐぢょにかき乱してくださいっ!」
「えらいね、言えたね。そんな
ちゃんに、百ちゃんからご褒美あげる」
「ひっく……んっ、やぁぁァァアぁァぁぁッッ!!」
《続》