朝が来るまでは俺だけを見て


 ぼんやりとする頭。
 気怠い体。
 床に脱ぎ散らかしたままの服が、昨夜の出来事が夢ではないと物語る。
 ひとまずシャワーを浴びようと俺はバスルームへと向かった。頭から湯をかぶれば寝ぼけ眼が冴えてきて、より昨夜を思い出させる。
 またいつかどこかで会えるんじゃないかって、そんな気がして俺は彼女の名前を呟くんだ。、って――。




 行きつけのバーでひとり、夜を楽しんでいた昨夜のこと。カウンター席にいる俺の隣の隣に、同年代くらいの女性が座った。仕事帰りだろうか、ブラウスとスカートにジャケットというオフィスライクな格好。目の下には若干くまが出来ていた。お疲れのようだった。マスターに梅酒のロックを頼めばカウンターに突っ伏した。

「……あ、あの……大丈夫ですか?」

 何故だろう。声をかけずにはいられなかった。
 彼女はとろんとした目で俺を見る。

「俺でよければ話くらい聞きますよ」

 力なく笑った彼女はおぼつかない足取りでこちらにやってくる。ふらりと傾く体がスローモーションのように見えて慌てて支えれば、ふわり香るアルコール。どうやら、この店に来る前にも行っているようだ。
どうにかイスに座らせてマスターに追加の水を頼めば、ドンと胸に衝撃が走る。

「おねがい……今晩だけでいいの」
「あ、いや……その……今晩だけってどういう……」

 胸元でごろごろと甘える姿は気まぐれの野良猫のようだった。見ず知らずの俺に何をどう求めているのだろうか。顔色をうかがってもわからない。
 出てくる梅酒を水のようにがぶがぶと飲んではまた頼んで飲む。その繰り返し。かれこれ五、六杯は飲んでいた。お酒に強いのか気分が悪そうには見えない。酔ってはいるようだけど。

「お姉さん、終電なくなくなっちゃいますよ? 駅まで送りますからそろそろ帰りませんか?」
「……いや」
「いや、じゃないですよ。お姉さん、体壊してしまったら……」
「……
「はい……?」
って呼んで。お姉さんはいや……」

 すがるような眼差しは俺の理性を打ち砕くには十分で――。
 どういった経緯で彼女をこの後“お持ち帰り”したのかは覚えていない。

「んっ……あっ、んぁ、い……やぁっ……!」
「いや、じゃないよね? 本当は気持ちいいんだろう?」
「あぁんっ!! いじわるしないで……」

 ああ、参ったな。彼女の悩みを聞いていたら自分と重なるところが多くて情が移ってしまった。アルコールのせいかもしれないけれど、気持ちも昂ぶっていた。初対面なのにこんなことをするだなんて、楽と天が知ったらどんな顔をするだろう。そう思いつつも、俺はの腰をやさしく持って奥まで貫く。

「ひゃぁぁっ……! んっ、んぁっ! や……りゅ、龍くん……!」

 駄目だ。そんな顔して俺を見ないでくれ。
 本気にだけはならないつもりだったのに。
 ちゃんは俺の名前を一生懸命に呼んで、背中に手を回した。彼女の爪が食い込んでくるその痛みすらただただ愛おしい。

ちゃん……」

 ーー俺は君が欲しい。想いが止まらないんだ。
 角度を変えては何度もキスをする。その髪に。その首筋に。その唇に。その指先に。俺はちゃんを愛してるんだよっていうシルシを。
 綺麗じゃない愛だって構わないさ。

「ねぇ、ちゃん。悲しそうな目はしないで?」
「んふっ、ぅ……龍く、ん?」

 ピストン運動を止めれば、俺の下で必死に涙目を堪えている彼女がいて。

「もう……やめちゃうの?」
「く……っ!」

 再び自らのソレをねじ込めば、彼女は快楽に溺れた。

「あんっ、んぁっ……! やっ、やぁっ、いっ……いっちゃ、いっちゃうよぉ……!」

 口から涎をこぼして厭らしい。全部舐めとるようにキスをする俺は耳たぶにも吸い付く。

「いっ……やぁ、やぁぁああぁぁ! 出ちゃうぅっ!」
「いいよ。全部出しなよ……っ!」
「やああぁぁあぁぁぁっ!!」

 噴水のように勢い良く出る液体がシーツを汚す。
 ぷっくりとした蕾をヒクヒクさせているのがまた可愛くて、そこにもキスをする。

「可愛い……」

 ぐったりしたちゃんは起き上がることが出来なくて、俺は寝たまま後ろから抱き締めた。それだけじゃ終わらせない。抜いたばかりの膣に指を二本入れてみた。親指は蕾をゆっくりやさしく撫でて刺激ながら。

「りゅっ、龍くん……だめだよぉっ……んあぁっ!」

 危険な恋は成就しない。知ってるさ。
 だから、このままずっと抱きしめさせて。朝が来るまでは、俺だけを見て。

《終》

>>2018/03/16
初・i7の裏夢はつなぴーになりました。つなぴソロ聞いた衝動です。