ありふれた特別な日々


 ーーおはよ。
 夢の中にいる彼女が目を覚まさないのをいいことに、俺はまぶたにそっとキスをする。んん、となんとも言えない声で返事をされたがどうやらセーフだったらしい。

 アラームが鳴る三十分前といったところか。毛布をにかけ直し、キッチンへと向かう。朝は当番制で用意するのがルールだ(といっても、つい最近決めたんだが)。今日はサンドイッチにでもするか。卵は昨晩茹でた残りがあるしな。


 二人でこのアパートに住み始めてふた月といったところか。
 お互いに帰宅時間が合わず、すれ違うことが増えてきたあたりから口げんかすることもあったっけな。随分と昔の話みたいだ。
 当たり前のようにが隣りにいて。
 当たり前のように俺がそばにいる。
 が笑えば俺も楽しいし、泣けば悲しい。それだけ、彼女に影響されている。絶対的な存在。
 家に帰っても、もう真っ暗な部屋ではない。冷えた手が一瞬であったかくなるくらいしあわせな気持ちに包まれる。


 ありふれた特別な日々がいつまでもずっとずっと続いてほしい。
 二人分の皿に盛り付けてコーヒーを用意する。ダイニングテーブルに運びながら未だに眠るお姫様の寝息に耳を立てた。

 今日もここで待ってるからな。ちゃんと帰ってくるんだぞ、いいな?

>>2017/12/22
キャラソン「O・HA・YO」をイメージしてます。
棗バージョンは「ありふれた特別な日々」がテーマ。