朝メシの味噌汁
(まさか同級生とキョーダイっていう関係になるとは思っていなかった。その同級生に姉がいることは知ってはいたけど会ったことなんかなくて。初めて会った時、目を奪われた。時間が止まった。これが一目惚れってヤツなんだって。さんは昼から夜にかけての仕事ということで、週に五回の朝食当番を快く引き受けたと京兄から聞いた)
いい匂いがする。
なんか、こう……ふわふわーってしてて、やさしくて甘くて、素朴な……ああ、これは、卵焼きと味噌汁だーー。
え? 寝言かって?
ち、ちげーよ! 寝言じゃねえ! 起きてるだろ! い、今、起きたんだ!
あ? 「今起きたんだったら寝言じゃん」だって? ちげーから!! 朝四時に起きてきてソファーで横になってただけだからな! 朝早いねって、そ、そりゃーな! 髪の手入れとかもしてーし、その、あの……あの……その、だな……。あ、ああああ! な、なっんでもねーよ。
(キョーダイの誰よりも先に、さんにおはようって言いたいだなんて言えるかよ……)
顔赤くない? 大丈夫って?
お、おおっ、おいっ! ち、ちけーよ! 熱あるか確かめたいからおでこ出してって、俺、子どもじゃねえし! うおおおおお! ばっ、やめっ……!
(ソファーの肘掛け側に逃げる俺。迫ってくるさん。逃げ道のない俺はいつの間にかさんに馬乗りにされたような状態になって、他のヤツらに見られたりでもしたらヤバイくらい、ヤベー状況に。だってさ、これ、マジでヤベーって。さんの膝が、足が、俺の横腹に触れてるしよ。何せ、柔らかいお尻がよお……腹の上にあるとか、色々と想像しちまうだろうが。しかも、エプロン姿。新婚さんの朝飯のシチュエーションみてえじゃねえか! “ご飯にする? 朝風呂にする? それとも私?”とか今まさにそんな……。あああ! チクショー! 熱よおさまってくれ!)
あ、あのよお、さん……その、お、俺……っ!
(彼女は観念しなさい、と勝ち誇った笑みを浮かべる。怪しい)
な……っ? 何ごそごそしてんだって、ケータイ? 何に使うんだ、っておい! 今カシャって言ったぞ! ちょっ……! カメラ向けんじゃねえ! や、やめろおお!
は? こんなに可愛いゆーくんを撮らないとか勿体なかったからって……。可愛いのはさんなんだけどな。いい加減早く気付けってーんだ。
っと、う、うおおおおおお! お、俺の心の声が出てなかったか? あ、う、嘘だろ?!
今のはナシだ。俺は何も言ってない!
(途端に彼女の表情が曇る)
あ、いや、違う! あ……いや、嘘を言ったわけじゃなくてだな……。
ーーどうすりゃいいんだ?! 教えてくれよ!
>>2017/12/28
こういう感じの侑介がたまらなく愛おしい。いじりたい。