01:00 PM


 彼女日記――何時何分に彼女がどうしたかを逐一記録した日記のこと。
 最初は彼女がどういう人間かを知るために手帳の隅に記録していた。
 唐突に「新しい姉妹が増える」と言われて、椿兄さんのように素直に喜べなかった。警戒していたからだ。妹の方は二日目から書くのをやめた。僕に対して必要以上に詮索をしてこないし、わざわざ記録するまでもなかった。兄さん達が質問攻めするし、いつも取り囲まれているから。

 問題は姉の方だ。
 妹とはタイプが違う。うちの兄弟で例えるのなら、そうだな……椿兄さんみたいな人だ。とにかく、元気。テンションが高い。いつも誰かしらを構ってる。明るくて、笑顔がまぶしくて、誰からも好かれるようなそんな人だった。
 だから、僕にとっては問題がある。
 こういうタイプの人間は、無駄に優しいんだ。笑顔の裏では涙を流しているんだ。
 ほら、僕は早々、彼女を気にかけている。彼女の声に鼓膜が反応する。目で追っている。


《彼女日記 X月X日》
 6時10分:起床。パジャマのまま洗面所で歯磨き等をする。髪のセットはまだしない。お化粧も後で。
 6時30分過ぎ:リビングで朝ご飯を食べる。トーストとミルクティーの組み合わせが多い。
 7時:僕を含めた学生組にちょっかいを出しながら、周りに男がいるにも関わらず平然とリビングの一角で着替える。毎回侑介が顔を真っ赤にするから面白いようで、わざと見せつけるようにストッキングを履く。……ほんと、彼女はいやらしくて綺麗だよね。
 8時:慌ただしく家を出る。車出勤。15分程で職場に到着。
 18時:帰宅。リビングに直行。早々にストッキングを脱ぐ。ブラウスのボタンをひとつ外す。ソファーに寝転ぶ。帰宅している学生組にまたちょっかいを出しつつもうつらうつらに。
 18時30分過ぎ:眼鏡をかけたまま寝る。すーすー、と可愛い寝息が聞こえてくる。ブランケットをそっとかけてあげるのは大体雅臣兄さん。時々、赤面しながらも侑介。間に合えば僕が。
 19時:起きて夕食をとる。その後、片付けてお風呂へ。
 22時:自室へ。戻って早々ベッドへ飛び込む。スマートフォンでゲームを少し。ごろごろまったり。
 23時:お気に入りのお茶を飲む。支度をして寝る。


 大体、こんな感じだ。逐一メールや電話をして確かめたから。見に行ったこともあったかな。そういう今も息を殺して物陰に潜んでいる。時計は1に針が指している。部屋着のままということは、どうやら仕事は休みで一日家で過ごすよう。ーーちょうどいい。好都合だ。
 さて、自室に戻るとしよう。仕掛けた監視カメラで充分だ。まずは試作運用だ。成功したら彼女が使う全室に取り付けるよ。僕が直接見てあげられない時に役に立つ。防げる危険は防ぎたいんだ。監視カメラだなんて犯罪じみたことだけど、方法は問わないんだよ。さんを守らないと……僕の手で守らないと。他の奴らに穢される前に。

>>2018/01/05
夢主至上主義ヤンデレ祈織さまです。