（朝日奈家の天使と言えば、末っ子の弥だろう。長男の溺愛っぷりはお墨付きだし、あの風斗でさえも弥に負ける。裏を考えることのない、無邪気で純粋な心は弥にしか持ちえない。兄弟のみならず、弥から見れば義理の姉に当たるもとりこになっていた。ここ2、3日前、弥から直々に部屋に訪ねてきて「おねーちゃん、今度、いつおやすみ？」と目をキラキラさせてその場で飛び跳ねて聞かれるものだから、寝て過ごそうと思っていた彼女の疲れは消え去り、遊ぶ……デートの約束をしたのだった――）



　わーい！　今日はおねーちゃんとデートだぁ！　うっれしいなぁ～♪
　え？　廊下をぴょんぴょんしてたらけがするよって？　だいじょうぶだよ、おねーちゃん。僕だって大きくなったんだよ！　背がね、去年よりもこのくらい伸びたんだからね！

　うんうん。そう！　僕のおかあさん指くらいだよ。どうだっ！
　ふーたん、いっつも僕のこと「チビ」とか「おチビさん」とか言ってるけど、おっきくなってるもん。いつか、ふーたんの目の前にどーんって腕組んで立って、見下ろしてやるんだ。
　でね、僕が高校生くらいになったら、をお姫さまだっこするの！
　今は僕の方が手が小さいし、背もうんと小さいけど、に見合う男になるから待っててね！
　こうやって繋いでくれた手を、僕が引っ張ってあげたいんだ。

　うん？　今日の僕、頼もしい？　そうでしょ？
　誰かに教えてもらったわけじゃないよ。まーくんとか、あっくんとか、ふーたんとか、聞いてないもん。

　じゃあ、何で名前が出てくるのって？
　……ご、ごめんなさい。本当は聞いた。
　女の子のコーリャクホウホウ（？）を最初につっくんとこ行ったら、あっくんが「椿の話はあてにならないから、僕が代わりにアドバイスするよ」って。嫌がることしちゃダメなんだって！
　次にまーくんとこ行ったら、ギオンゴ（？）とかを使わないようにタンゴ（？）、うん……？　おだんご、だったっけ……？　使えばいいんだって。
　最後にふーたんとこ行ったら、コミニケーション（？）と引っ張るんだって。
　ん～。何かね、おにーちゃん達、ムツカしいこと言っててわかんなかった。

　そんなこと考えなくていいって、どーいうこと？
　僕、おねーちゃんともっともっと仲良くなりたいし、コイビトにもなりたいのに。

　あ、おねーちゃん、ほっぺたちょっと赤くなってるよ？　どうしたの？　お熱、あるの？
　お熱あったらタイヘンだよ！　はやく、まーくんとこ行かなきゃ！

　ふえ？　そーいうわけじゃないの？
　なーんだ。よかった！
　ねえねえ、おねーちゃん！　今日は、僕、おねーちゃんの疲れを取ってあげたいんだ～。肩たたき100回券も、ほっぺにちゅー券も昨日もらったもん。がんばるね！　、だぁい好き！！