04:00 AM


(同棲を始めたのはかれこれ3か月前のこと。アイツのアパート更新日が迫ってきていたということと職場の異動が重なり、俺のアパートで共に生活をした方がいいのではと提案をした。あの時の表情は今でも覚えている。例えるのなら、小学生がランドセルを買ってもらった時のような……「今と将来」を見てニパァって笑ったんだ。もっと早く同棲しないかと言っても良かったと思ったのは、まだ教えなくてもいい話だ。仕事も順調、プライベートも順調で、充実した毎日を過ごしていた。だが、ある日、そんな俺とに小さな事件が起こった。陽が沈みきった18時。外回りの仕事が早く終わり、珍しくこの時間帯に帰った矢先のこと――)



 ……は? 合コンに出るだと?!

 コクコクとうなずくコイツは目を伏せて申し訳なさそうに俺を見上げる。「人数合わせのためと、会社の異動組の送迎会なの」と。がむやみに合コンに参加したりするヤツじゃないのは俺がよくわかっている。わかってはいても、だ。自分の女を、男がいる場所に放り込むことができるかよ。やましいことはないし送迎会がメインだからと言うを自分のわがままで止めることはしたくはない。

 お土産もらって帰るから心配しないでって?
 いや、俺はそういうことを心配しているんじゃないんだが……。まぁ、いい。時間大丈夫なのか? 送っていく。帰りも電話しろよな。

 悪いから帰りは大丈夫だよって、俺が大丈夫じゃないんだよ。
 いいから、気にすんな。早く終わっても、日付が変わっても、明け方になってもいい。必ずだ。いいな?

 そう言って俺は、助手席に乗せて車を走らせたんだ。
 普段は童顔で子供っぽいしぐさのが、何時にも増して大人な女性に見えるのは、華やかでいろっぽいメイクと服のせいなのか。「ありがとう。いってきます」と手を振るアイツを見送っても、不安が渦を巻くばかりだった。




 ……遅い。
 時刻は日付がとっくに変わった2時半。いくらなんでも遅すぎやしないか?
 二次会に行ったとしてももう帰って来てもいい頃だろう。まさか、事故にでも遭ったんじゃないだろうな? それとも、三次会にも行ったのか。三次会と言う名のお持ち帰りか? いや、もしかしたらもしかするかもしれないが……アイツに限ってそんなことは。だがしかし、……遅い。壁にかかっている時計を何度眺めても針はせっせとは動いてはくれず、瞼が重たくなった俺は体を委ねてしまったんだ。


 ガチャン。
 金属音が微かに響いたのを聞き逃しはしなかった。

 酒の匂いを漂わせながら、おぼつかない足取りでやってくる。棗、とコイツは俺の心配をよそに無邪気な笑顔で抱きついてきやがった。

 どこをほっつき歩いていたんだ!
 連絡をしろと言ったはずだ!
 どれだけ心配したと思っているんだ!
 そう叱ろうとも思ったが、こうも満面な笑みでおまけに甘ったるい猫撫で声で「棗~」と呼ばれたんじゃ叱る気にもなれないだろうが。

 次からはもっと早く帰ってこい。心配なんだよ。

 ……は?! 携帯電話を家に忘れたうえに、お金もギリギリしかなかっただと?!
 これからは門限は0時――いや、21時にするからな。夜遊びは禁止だ!

 えー、じゃない!
 今回で身に染みた。は夜遊びさせるべきじゃないってな。
 心配し過ぎてどうにかなりそうなんだよ。馬鹿……。

 だから、寝直すのに付き合ってくれ。いいな?

>>2014/12/12
棗はベタ展開がお似合いだと勝手に思っています。今回は心理描写や独白多めに。ドラマCDって独白なものもありましたよね……?

【補足】テーマは、同棲中のツンデレデレ棗×社会人夢主。
わりと定番? なモノを、チート&フツー設定の棗でやってみました。この後は、二人で仲良く寝ます(笑)